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俳句に詠まれた小久慈硯

俳句に詠まれた小久慈硯この短冊は、水戸市在住の個人が所蔵するものです。
氏の談によれば、昭和40年の初秋に絵の依頼のため、東京都久我山に酒井三良を訪ねた折、手みやげがわりに小久慈硯を持参したそうです。その時酒井は、手にとって眺めたりなでたりとしばらくの間していましたが、やがて別室から墨と筆を持ってくると、その硯で墨を磨り、即興で一句したためました。

「新涼や 名硯といふ 肌ざわり」 三良子

葉のすれる音や草木に吹く風が、初秋の涼しさを表す「新涼」という季語です。よみがえるような新鮮な感触が伝わってきます。
贈られた黒く光る硯を手にすると、ずっしりとした存在感があり、山深い沢から掘り出された石を、心を込め丁寧に彫り磨かれた硯は、きめが細かく滑らかで、ひんやりとしたその感触の良さとすり心地は、満足のゆくものであったのでしょう。
この句の下五の「肌ざわり」とは、自分の手で感じたものであり、さらに、硯と墨の相性の良い肌触りまでも含まれているように思われます。また、中七の「名硯」という言葉の響きの表現も、句を涼やかなものにしています。
動きの無い硯石から涼しさを感じ、それを季語として句を詠んだ、まさに画家としての鋭い感性に他ならなりません。
昨今は筆ペンがすっかり重宝がられていますが、この時代は硯と筆が机には置かれ、特に画家や文人にとっては、硯は無くてはならないものであり、最高の贈り物だったことは言うまでもありません。
この句は、小久慈硯を贈った人と硯を彫った人への三良子からの挨拶句であると思います。


酒井三良(さかいさんりょう):三良子

福島県出身の日本画家(本名は三郎 1897-1969)。
日本美術院に所属(同人・評議員・監事等を歴任)。
酒井の作品は、潤いを帯びた筆致で、淡彩と墨彩の素直な表現で清新な詩情性のあるのです。
五浦の大観別邸に戦中から戦後にかけ住んでいたため、茨城県内に多くの知人やファンがいます。

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