【移住者通信Vol.10】能村さん夫妻
能村さん夫妻(祐一さん・仁美さん)
能村祐一さん、仁美さんご夫妻。
令和4年、空き家バンクを通じて袋田地区にある見晴らしの良い農地付き古民家を購入。その後リフォームを進め、令和4年11月に完全移住。令和6年7月に現在の家が完成しました。
ご夫妻ともにリモートワークで東京での仕事を継続しつつ、大子町での田舎暮らしを満喫しています。
※写真背景について(祐一さん)
型ガラスのアルミサッシの建付けが悪くなっていたため、隣のおばあちゃんの要望もあり、修繕しました。
みなさん、お越しの際は養生テープの→に従って開けてください。呼び鈴は近いうちに交換予定なので、×印テープをつけています。
なぜ大子町に移住しようと思ったの? これまでの経緯は?
(祐一さん)
将来の事を考えて色々活動していました。10年以上前からですね。以前住んでいた東京のマンションにもつながりの深いコミュニティがあり、悪くはなかったのですが、少し贅沢だったんでしょうかね。田舎に引っ越したいという気持ちがずっとありました。
はじめは利便性が高く、農業のできる場所がよいと思い、県南地域で物件を探していましたが、なかなか縁がありませんでした。お試し住宅までは利用しませんでしたが、とにかく居心地のいいところを色々と探していました。
実は、空き家バンク相談センターの松田さんに連絡する前に、独自に物件を調査してあたりをつけていました。ですので、内覧をお願いした時には、大子町への移住をほぼ決めていたんです。後になって、8年前にキャンプで訪れた奥久慈憩いの森から見えた雲海の景色が、まさに今住んでいるあたりだったことに気が付きました。
(松田さん/インタビュアー(空き家バンク相談センター相談員))
探していたのは茨城県だけですか?
(祐一さん)
私や妻の実家がある地域も検討できなくはありませんでしたが……
(仁美さん)
大子以外に、よく通っていた地域があったのですが、残念ながら被災され、目星をつけていた物件が壊れてしまって、「これは別の場所がいいという報せなんじゃないか」と思いました。
(松田さん)
空き家バンク担当として、これまでいろいろな空き家を見てきましたが、この物件のように縁側から農地を見渡せるロケーションは意外と希少で、ありそうでなかなか無いですよね。
(仁美さん)
そうですね。雰囲気がとても良かったので、最初に下見に来た時、「ここに住むのかな」という気がしました。
(祐一さん)
この地域へは、国道から逸れて入るのですが、本当に景色がよく、桃源郷のように思えました。大きな道路からそれほど離れていないのに、がらりと空気が変わる。ここに決めたのは、物件に魅力があったということが一番の理由です。
現在までの生活や取り組んでいることはどんな感じ?
(祐一さん)
定年後、業務委託という形でこれまでの仕事を継続し、東京の会社にリモートワークで勤めています。パソコンの取り換えや人事異動、歓送迎会など、1年に1度くらいしか東京に行きません。
(仁美さん)
私も基本はリモートワークで済んでいますが、仕事によっては現場に通う案件もあるので、水郡線を使ったりしています。ときにAIタクシー(バス停も目の前にある)を活用したり、カーシェアを使って出張にもいくことのできる環境なので、引き続き利用できるようにお願いしたいです。
※AI乗合タクシーたくまる
AI乗合タクシーたくまるについて | 大子町公式ホームページ
大子町が運営する公共交通事業。町内ならどこまで乗っても300円(夜間500円)です。
専用アプリ、もしくはお電話で御予約いただけます。
【日中 9:00~17:00】
運行:毎日
料金:片道300円(未就学児=無料, 小学生~高校生・障がいのある方=100円)
【夜間 17:00~23:00】
運行:金・土・祝日前日
料金:片道500円(未就学児=無料, 小学生~高校生・障がいのある方=200円)
↓予約サイト
SAV -Smart Access Vehicle-
予約専用電話:090-7209-4152
※カーシェアリング
カーシェアリングについて | 大子町公式ホームページ
無人のレンタカーシステムで、観光やビジネス等の移動に利用できます。
事前に会員登録とインターネット予約を行い、運転免許証を使って乗車します。
ショート料金:199円/15分
6時間パック:4,099円
12時間パック:7,599円
24時間パック:9,599円
↓予約サイト
NISSAN e-シェアモビ
(松田さん)
馬やヤギなど動物をたくさん飼育されていて、その行動力に本当に驚いているのですが、お世話はリモートワークである程度時間を確保できるから、ということですか?
(祐一さん)
会議と会議の隙間に世話をしています。今は会社組織の再編でかなり忙しくなってしまったので、越してきた当初やるつもりだった農業がなかなかできずにいます。近所の皆さんに野菜をたくさんおすそ分けをしてもらっているので、作る理由がなくなってしまって(笑)
動物は今のところ、馬1頭、ヤギ2頭、猫1匹がいます。これから鶏も飼いたいと思っています。猫については、東京にいた時に飼っていた猫が亡くなった事情があったため、もう飼うことはないと思っていたのですが、昨年の9月ごろに大雨が降った後、蔵に子猫が迷い込んでいたので、保護しないわけにはいきませんでした。その子の親猫がたまに様子を見に来たりしています。
(松田さん)
大子に来たら動物を飼おうという目標があったのですか?
(祐一さん)
動物の飼育に限らず、昭和の暮らしを再現するというコンセプトで、「みんなの実家」と名付けて取り組んでいます。私たちが子供のころは、祖父母が馬や鶏を飼っていましたし、田舎の実家に帰った時のことをよく覚えています。里山での暮らしぶりや、そこで得た経験というのは、子どもにとって生きる糧になる。そういう理想があったので、古民家を手に入れたら、昭和の暮らしを再現してみたいなと思ってきました。
馬をすぐ飼えるとは思っていなかったのですが、ヤギを譲ってくれた方が「馬もいっしょにどうですか」と言ってくれたため、うちに来ることになりました。競走馬のすべてが乗馬用や種馬になることができるわけではなく、乗馬クラブにも入れないほとんどの馬は肥育牧場で馬肉になる運命のため、保護の観点からも飼おうと決めました。
(松田さん)
大子で「能村総研合同会社」を立ち上げたとのことですが、どういった経緯がありましたか?
※能村総研合同会社
能村祐一さんが代表を務める、大子町を所在地とする会社。
大企業で培ってきたノウハウを生かし、第二の故郷である大子町を盛り上げるべく、2024年4月に設立。
デジタル技術の導入や、商品企画、経営戦略等のプロフェッショナルによるサービスを提供しています。
https://nomuso.com/
(祐一さん)
定年後も引き続き同じ仕事をしつつ、個人で事業を行うことを考えた時、経費としてお金を運用できるようにしようと思ったのがきっかけです。所属している会社が副業可能なので、大子のためになることをするというテーマで、協力してくれる人材を2~3人巻き込んで活動しています。大子に来てみないとわからないことがたくさんあるので、副業人材にもいろいろなことを知ってもらいたいと思っています。例えば、大子は暑い・寒いとよく言われますが、意外とそうでもなく、都会のヒートアイランド的な暑さのほうが苦しいとか。火を焚いてみると、案外寒くないとか。(自宅のWi-Fi環境構築のついでに来ていただいたところ、「やはり寒い」とは言っていました(笑))
企業人材派遣プログラム(地域活性化企業人、地域プロジェクトマネージャー)等、町が企業側の制度を導入するための架け橋になれないかとも思います。
また、会社とは別の取り組みですが、福神漬けを作ってくれる近所の人がいらっしゃって、それがとても美味しくて評判なので、本格的に加工・生産できる設備を作ろうと地域の皆さんと相談しています。
今後挑戦したいことは?
(祐一さん)
「みんなの実家」というコンセプトで、地域のコミュニティづくり・強化に取り組んでいます。地域の人たちがいつまでも元気で仲良く暮らせる環境を作りたいんです。例えば、農作業中に休める東屋や、先ほど挙げた加工場などですね。
(松田さん)
能村さんは、ものすごく地域に馴染んでいて、この地域の住民の皆さんととても上手く関係を築いていますが、なにかコツがあるんでしょうか?
これからの移住者が地域に馴染むためにも、コミュニケーションのノウハウを伺いたいです。
(祐一さん)
実体験としては、暑い中、90歳以上になるおばあちゃんが町道ののり面に腰かけて休んでいたのですが、「熱中症になりますよ」と声掛けをしたところ、後で娘さんからそのことで感謝された、ということがありました。そういうこともあって、自然に溶け込めたのだと思います。何気ない声掛けなど、普段から意識しておいてもよいかと思います。
それに、周りの人の気が良すぎるおかげだと思いますね。大子の人たちはみんなウェルカムな感じで、親切な人がとても多いんです。みなさん、観光客などを相手に人見知りしないような気がします。
ノウハウと言われれば、地域の事に興味を持って積極的に関わっていくことだと思います。壁を作らず、交流した方がいい。他の地域などでは、別荘族・観光客・地元の人ではっきり分かれていることもありますが、大子町はそうではなく、飛び込む勇気のある人が飛び込めば、受け入れてくれる地域です。
勤めている会社についても同じように考えていて、昔ながらの縦割りを解消するため、横断的にマネジメントしようという取り組みをしてきたため、とにかく周囲と連携することが大切だと感じています。役場関連の組織などにも共通するかと思います。
(松田さん)
働く場所・人が少ない大子町では、重要だと思います。
(仁美さん)
働く場所でいえば、リモートワークや室内で出来る仕事を誘致するのはどうでしょうか。アニメ制作など地方を拠点にしている会社は多いですね。
(江尻/まちづくり課職員)
大子町の穏やかな環境で制作に取り組むことで、アニメータが力を発揮できそうですし、人の呼び込みという面でも魅力的なお話だと思います。
企業誘致全般に言えることですが、「現地での人材確保の難しさ」をネックに感じて反応がよくないところが多く、解決策がないか悩んでいるところです。
(祐一さん)
少ない人材を活かすという意味では、現状では就職のため外へ行ってしまう子供たちのために、「町内でベンチャー企業を立ち上げる」ことを目指せるような経営塾を作ることも考えています。やる気がある子に投資でき、子どもたちが失敗を恐れず、大子町でチャレンジできる仕組みを作りたいです。
大子町は子どもが少ないと言われていますが、子どもたちと触れ合う機会は意外に多くあります。その子たちに、「大子でもチャレンジできるんだ」と教えたい。大子でYouTuberなど、何でもやってみるべきだと思います。それに対して大人がしっかりと支援、伴走してあげて、わからないことや社会常識を教えてあげる枠組みが必要です。優秀な子は、中学生くらいでも、やりたいことさえ見つければいくらでも活躍できるんです。
(松田さん)
先ほど触れていた福神漬の生産加工場構想について、詳しく教えてください。
(祐一さん)
まずは、高齢者の方同志が仲良くできるような環境を作る予定です。そのうえで、四国の「葉っぱビジネス」のように、高齢者が一緒になってワイワイ働き、活躍できる仕組みを作りたいです。畑仕事から漬物づくりなどを数人で集まってできるようにして、儲けが出るようになった時、細かいマネジメントに詳しい人がサポートすればよいと思います。
また、シルバー人材センターの方々など、大子には特技があって、何でもできるという優秀な人材がたくさんいるので、しっかりマネジメントする組織を作ることができれば、これからの移住者が助かると思います。職人技を持っている人だけの事業部、草刈り事業部、企画事業部を作るなど、利用者、現場、働き手をマッチングするための仕組みを作り、人を上手く使うということが重要です。
もう1点、ふるさと納税の品目をもっと増やす取り組みが必要だと思っています。生産加工場の話にもつながりますが、他の市町村に負けないように品目の充実に貢献したいです。
※令和6年度は隣接する常陸太田市が大幅に伸ばし、大子町の4倍となりました。大子町も負けずに頑張ります。
ふるさと納税のリアル 全市区町村の実質収支マップ
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/hometown-tax-donation-trends-map/
(松田さん)
今のご自宅の広い和室などのスペースは、今後どのように活用したいですか?
(祐一さん)
民泊のようなことがしたいので、いばらきグリーンツーリズムが実施している教育旅行に参加する予定です。「みんなの実家」をコンセプトに、うちだけではなく、隣近所を巻き込んで、地域全体で農作業等を体験してもらおうと思っています。
※教育旅行(田舎体験民泊)=都市部の小中学生の民泊を受け入れ、農作業等を体験してもらう取り組み。
大子町を町外の人にPRするとしたら?
(祐一さん)
大子町民の良さをいかに外向けにPRするかが重要だと思います。飾り気のない、自然体の人々を写した方がいいですね。
(仁美さん)
同じ茨城県内の方々から、「なんであんな田舎に引っ越すの?」と言われて愕然とする事があります。確かに、どこにでもあるようなフランチャイズの店舗は少ないかもしれませんが、逆に大子町でしか見つけられないようなお店が沢山あります。
味わい深いカフェや、週1で必ず行くご飯やさんとか。お店でご飯を食べるときに声をかけてもらうと常連になった気がして凄く嬉しいです。
ある日ドーナツを食べたくなって、買いに行くと車で往復2時間。「よし!自分で作ってみよう」となって、初めてドーナツを作ってみました。美味しくて感動しました。すぐ手に入らない一見して不便に思えることが、逆に楽しいということを色んな人に知って欲しいです。不便さを魅力に変えて発信していけたらいいですね。
(祐一さん)
来ないとわからないことがたくさんあるので、移住者向けの民泊も考えているんです。地元のぶっちゃけ話が聞けるような民泊で、来てくれた人にPRするのもいいんじゃないかと思います。ここまで物件を探しに来るような人は、良い家がありさえすれば、移住すると思います。
今後の大子町に望むことは?
(祐一さん)
子どもたちが町外に出ていかなくて済むように、地域の中でいろいろなことが循環する環境になってほしいです。
(仁美さん)
企業に勤める以外で、完全にオンラインで仕事ができる職業は、漫画家、作家などがあるので、大子町で働き続ける方向でも子どもたちを支援することができれば良いと思います。大子町には司法書士が1~2名しかいなかったりするので、この町に足りない職業をピックアップして、子どもたちに紹介するだけでも違いますよね。
その他に、移住者が助成金を使ってリフォームするには、工務店などの情報が足りなくて苦労しました。室内の塗装も自分たちで必死に頑張りましたが、ご近所の方々から塗装屋さんを紹介してもらい凄く助かりました。他県からの移住の場合は特に調べることが難しいので、リフォームの相談に乗ってもらえる部署やサポートがあると嬉しいですね。
(祐一さん)
行政にはできることとできないことがあるかと思うので、民間と上手くタッグを組んで課題に取り組むことが必要です。例えば、公営塾でAIの使い方を教えたり、役場の職務にRPA(自動操作)を導入したり、人数が限られている中で付加価値のある仕事をするためには、効率化を進めることが大切だと思います。
※公営塾=茨城県立大子清流高校内に、大子町の支援で設立された塾。学校と連携し、個々のレベルに合わせた学習支援・進路指導を行い、「やってみたい」を実現する体験学習も行います。
(仁美さん)
町の医療環境を拡充してほしいとも思います。医療機関の再編などにより、整形や検査など、各分野に特化したりするといいんじゃないでしょうか。都会が嫌になってしまった看護師などにシーズンで働いてもらうことで人手不足を解消したり、観光とセットになったツーリズム医療を展開するなど、考えられることはたくさんあります。
大子町には、医療についてのグランドデザインを描いて、町ぐるみで呼びかけてもらいたいです。
(祐一さん)
大子には、歩いたり、畑を作ったり乗馬したりと、健康寿命を延ばすことが出来る長所がありますよね。
(仁美さん)
長く健康で暮らせる町ということなら、予防医療を強化するため、オンライン診療の導入を進めたり、精密な検査ができる病院を作るのもいいですね。
結びに
(ご夫妻より)
大子町にはまだ多くの課題がありますが、それを解決するためには、住民一人ひとりができる形で参加していくことが大切だと思います。AI乗合タクシー『たくまる』やカーシェアの利用を広げたり、行政の情報を見える化したりすることで、町の計画やイベントにも自然と関心が高まるはずです。その中で自分なりの“キラリと光るもの”を見つけていただけたら嬉しいです。
また、私たち自身も旧車ラリーや馬耕体験などを通じて、大子町ならではの楽しみを広げていきたいと思っています。袋田の滝だけではなく、地域の魅力を多くの方に知ってもらいながら、子どもから大人まで誰もが参加できる場をつくっていけたらと願っています。
※旧車ラリー例 フレンチトーストピクニック
https://sosaku.jp/event/2025/french-toast/
町の観光スポットクイズラリーと交通安全をテーマ(速さではなく、マナーを訴求)に実施する
問い合わせ先
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