【移住者通信Vol.12】星野さん夫妻
星野さん夫妻(星野明宏さん、奥さん)
星野明宏さんご夫妻。
東京で専門学校講師をしながらガラス作家としてキャリアを積み、令和6年に出身地である大子町へUターン。「ガラス工房」を設立することを目指し、令和5年12月、空き家バンクを通じて川山地区にある水郡線沿いの敷地の広い中古物件を購入。
その後、敷地内にガラス工房を新築。家屋も全面的にリフォームして、令和6年10月に吹きガラス体験工房・ショップ「ホシノガラス」をオープンさせた。
ホシノガラス 公式インスタグラム↓
ホシノガラス(@hoshinoglass) • Instagram写真と動画
なぜ大子町に移住しようと思ったの?
(明宏さん)
いつかは自分でガラス工房を持つなら、地元である大子町でやりたいと考えていました。そんな中で、起業型の県北地域おこし協力隊(PROJECT E)のことを知り、思い切って挑戦しようと動き出しました。
「大子町でガラス工房を作りたい」と考え出したきっかけは、少し遡るのですが、「丘の上のマルシェ(※1)」に出店するにあたって、まちの研究室・木村勝利さんと知り合い、2016年5月に帰省していた際に、大子町の地域おこし協力隊の活動報告会を紹介してもらいました。当時、大子町の協力隊の方たちが、年度を通じて実施した内容を発表されていました。それを聞いて、「大子町から出て行ってしまう人もいる中で、出身地というわけではないのに、こんなに大子町のために活動してくれる方々がいるんだ」と深く感動し、自分も何かできるんじゃないかと思うようになりました。そのことが、東京で生活する中でずっと気になっていて、大子町での開業に繋がりました。
※1「丘の上のマルシェ」
1年に1度、大子町で開催されているマルシェイベント。大子の山々を臨む環境で、陶器、古道具、木工、クラフト、野菜、ガラス、アクセサリなど、様々なアーティストのブースをめぐることができます。
丘の上のマルシェ(@okanoueno_marche) • Instagram写真と動画

移住を考えるようになってから、空き家購入までの経緯は?
(明宏さん)
はじめから「ガラス工房を作れる場所」という条件で物件を探していました。最初は倉庫がある物件を探していたのですが、納屋はあっても天井が低かったり(※工房は高温になるため、風通しの良い広い空間が望ましい)、機材を運ぶスペースがなかったり、なかなか好条件の物件が見つかりませんでした。
町付や相川などの物件も検討したものの、条件に当てはまらず悩んでいたのですが、12月に現在の物件が見つかって、何より景色が気に入ったのが決め手になり、ここを選びました。
(奥さん)
観光名所の「月待の滝」に近く、景観もいいため、この物件に決めました。
また、ガラス工房の性質上、火を扱ったり、音が出ることもあるので、あまりご近所に迷惑がかからない場所がいいなと思っていて、ここはその条件にかなっているし、下野宮駅や中心市街地からのアクセスもほどよく、理想的でした。
(明宏さん)
ガラス工房がメインだったので、家のリフォームは最低限にと想定していたのですが、大工さんと相談するうちに、長く住むことを考えたら、やはりしっかりとしたリフォームが必要だと思い、費用をかけて改修しました。スケルトンリフォームといって、骨組みだけをそのままに、全面的に施工してもらいました。
(松田さん)
ガラス工房をオープンさせるまで、色々な苦労があったと思います。
(明宏さん)
元々想定していなかったのですが、工房を新築しました。機材を搬入する時期が決まっていた関係で、母屋のリフォームとは別に工房を建てることにしました。
そのおかげで、元々母屋の店舗(お米屋さん)だった部分をショップ(ギャラリー)として併設して作ることが出来ました。
(奥さん)
結果的に、水郡線沿いの見晴らしの良いところに工房ができて、よかったと思います。
(明宏さん)
ガラスの制作中も、工房からの景色を見ながら気持ちよく作業しています。それに、ショップと工房はなかなか持てないですからね(笑)
こういった環境を作ることができてとても良かったですし、それが実現できる場所と可能性がある大子町だったんだなと思います。
また、空き家バンクリフォーム助成金(※2)や、商店街空き店舗等活用支援事業補助金(※3)、結婚新生活応援補助金(※4)を使うことができ、費用面で助かりました。起業する方への支援も充実していますし、実際にすでに移住して活躍している方がいらっしゃるというのも大きな魅力で、心強いですよね。
※2「空き家バンクリフォーム助成金」
空き家バンクを利用して移住した方・空き家バンクに登録している物件の所有者の方にご利用いただける助成金です。
移住者の方は最大70万円、所有者の方は最大50万円の助成を受けられます。
(問い合わせ先:大子町役場建設課 0295-72-2611)
空き家バンクリフォーム助成金のご案内 | 大子町公式ホームページ
※3「商店街空き店舗等活用支援事業補助金」
空き店舗等を活用して、商店街のにぎわい創出および振興に資する活動を行う方にご利用いただける補助金です。
(問い合わせ先:大子町役場観光商工課 0295-72-1138)
(令和7年度受付終了)大子町商店街空き店舗等活用支援事業補助金のご案内 | 大子町公式ホームページ
※4「結婚新生活応援補助金」
若者の婚姻に伴う新生活を、経済的に支援します。
【対象者】
・婚姻日に夫妻共に50歳以下
・他の家賃補助等を受けていない
・補助金申請日が婚姻届日の6カ月以内 など
【対象経費】
・新築、購入、増改築
・賃貸
・引っ越し費用 など
(問い合わせ先:大子町役場まちづくり課 0295-72-1131)
結婚新生活応援補助金について | 大子町公式ホームページ





現在の生活や取り組んでいることはどんな感じ?
(明宏さん)
工房で実施している「吹きガラス体験」を、地域の皆さまや観光の方に徐々に認知してもらって、だんだん来てくれる人が増えています。「大子町で楽しめる場所、大子町に来るきっかけの場所」として、ガラス工芸と触れ合える工房を作ることを目指していて、少しずつ形になってきたかなと思います。オープンから1年経って、ようやくそのことを振り返る余裕が出てきました。
【溶解炉】

※溶解炉でガラスを溶かし、ブローパイプで巻き取ります。
【グローリーホール】

※グローリーホール(再加熱炉)に入れて温度をキープしながら作業をします。
【ベンチ(作業台)】

※ブローパイプに息を吹き込みガラスを膨らませたり、ベンチで成形していきます。
形ができたら、徐冷炉(ガラスを冷ますための電気炉)に入れて一晩かけて冷ますと、作品の完成です。
(奥さん)
東京から越してきて、とても楽しく過ごしています。虫が苦手なので、少し苦労してますが(笑)
(明宏さん)
夜まで作業をしていると、電気のついている工房の窓に、四季折々の虫たちがいらっしゃいます。
(松田さん)
移住したての方は虫対策が必須ですね(笑)
🐛
(明宏さん)
前の持ち主の方がずっと使っていた畑が付いているので、土の栄養状態がよく、イチジクやブルーベリーなどいろいろな木も植わっていて、恵まれているなあと思います。耕作は両親に手伝ってもらいながら、夫婦で楽しく収穫しています。
なす、きゅうり、トマト、オクラ、モロヘイヤ、ピーマン、じゃがいも、ねぎ、たまねぎ…など、この夏は野菜を買うことはなかったですね。こういうことを実感できるのは、大子町ならではじゃないでしょうか。
夏は草がすごい勢いで生えたり大変な部分もありますが、土の匂いや季節の空気を肌で感じたり、東京での暮らしでは感じられなかったことを味わえています。
それに畑は、ご近所さんとのコミュニケーションツールになるんです。畑で作業をしていると、皆さんに声をかけてもらったり、できたものをもらったりあげたりしています。子どもの頃は当たり前すぎて気が付きませんでしたが、その面白さ、楽しさを実感するようになりました。
(松田さん)
そのほかに取組んでいることはありますか?
(明宏さん)
DIYに取り組んでいます。リフォーム中、自分たちで壁を塗ったり、壁紙を貼ったり、棚やカウンター、キッチン回りなどを組み立てたりしました。
大工さん、職人さんたちには手間をとらせてしまったと思いますが、多少は安く済みましたし、「やってみなよ」「上手くできたね」など声をかけてもらえました。
それらの作業を経験できたことも、とても面白く、よかったと思っています。
リフォームで綺麗に生まれ変わったので、空き家の内見で各地を一緒にまわってもらった松田さんにぜひ見てもらいたいです。初めは自力で物件を探そうと思っていたのですが、空き家バンクという制度があり、相談員の松田さんが親身に案内してくださったので、心強く、本当に助けられました。

今後挑戦したいことは?
(明宏さん)
地域の皆さん、事業者の方と繋がって、ガラスのモノづくりでコラボして外に発信していくということを目指しています。「hajimari」さん(大子町)のドミニカアイスコーヒーのためのグラスを一緒にデザインしたり、「AMAZING JUICE」さん(日立市)とのコラボ作品など、ほかにも色々な角度から取り組んでいるところです。
また、公民館講座(※5)で「風鈴制作体験」を実施しました。大子町で興味を持ってくださる方に対して、吹きガラスを知ってもらうきっかけとして体験していただく企画です。12月にはクリスマスに向けた制作講座を実施しましたし、今後も季節に合わせて楽しんでもらえる講座を考えていきたいです。
「大子町にガラス工房があったらいいな」という想いで始めましたが、町の人たちにも、「ガラス工房があってよかった」と、自慢に思ってもらえたらいいなと思っています。地域と繋がり、ガラスのものづくりの魅力を伝える役割を担っていきたいです。
※5「公民館講座」
町内在住・通勤のどなたでも参加できる講座。ラジオ体操、ペン習字、ヨガ、フラワーアレンジメント、歴史、水墨画、クラフト制作、ボクササイズ、タンゴ、ハープなど、毎年様々な内容で開催しています。
(問い合わせ先:教育委員会事務局生涯学習担当(中央公民館) 0295-72-1148)
公民館講座 | 大子町公式ホームページ
(松田さん)
アートとしての風鈴は、日本の大切な文化、風情だと思うので、どんどん発信してもらいたい気持ちがあります。この時代に、「風鈴が売れる町」というのはすごく素敵だと思います。
(明宏さん)
イベントの際に、たくさんの風鈴をかけ渡したり、りんごの木に飾ったり、大子町というフィールドを使ってチャレンジしたいですね。


大子町を町外の人にPRするとしたら?
(明宏さん)
自分のペースで移住生活を楽しんだり、チャレンジできる町なのかなと思います。移住したから何をやらないといけないとか、時間に拘束されるというよりは、焦らずに、大事に生活できることが大きな魅力の一つだと感じます。
近くにお住まいのUターンの方なども見ていると、皆さんそれぞれのペースで暮らしを楽しんでいる感じがします。
(奥さん)
東京にいた時は、人が多すぎて電車に乗るのも疲れていたし、せかせかと時間を過ごしていたような気がします。とりあえず生活しなきゃ、という。自分の気質的には、ここで一生暮らすのは苦しいなと感じていました。
でも、こっちだと、誰かと行きあったら挨拶ができるし、余裕をもって生活できているような気がします。
また、季節で変化していくふとした景色がすごくきれいで気持ちがいいですね。
今後の大子町に望むことは?
(明宏さん)
実際に移住を経験して、不動産関係、建築・リフォーム関係についても、もう少し情報があるといいなと思います。検索しても知りたい事がヒットしないので、リフォームの事例や事業者の紹介など、移住を検討している方への情報提供を強化できると、外の人が目を向ける要因になると思います。事業者さんの過去の実績がホームページ上にあるだけでも、とても判断しやすくなります。
また、戻ってきてより気になるようになったのは、医療関係のことです。ネットなどに情報が少なくて病院選びが難しかったり、機器や人手の不足のことなども気になります。この先年齢を重ねた時のことを考えると、不安に感じる部分はありますね。
(奥さん)
大子町が防災に力を入れているということはよくわかりますが、安心できる要素が増えてほしいので、これからのことをイメージできるように、防災に限らず情報発信量を増やしてもらうだけでも助かる人は多いと思います。
それから、大子町の豊かな自然や風景が、今後も残っていってほしいと思っています。
結びに
(ご夫妻より)
大子町への移住にあたり、たくさんの方々にお世話になりました。
地域と人とのご縁に感謝いたします。
今後も「地域とガラスのものづくりの魅力」を自分たちのペースで伝えていけたらと思います。そして、この場所が地元の方や訪れる方にとって、喜んでいただける場所にできたら幸いです。

問い合わせ先
このページに関するお問い合わせはまちづくり課 まちづくり担当です。
本庁2階 〒319-3521 大子町大字北田気662番地
電話番号:0295-72-1131 ファックス番号:0295-72-1167
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